かなり久しぶりになってしまいました。
シリーズ中ではかなり異彩を放つ作品。
あらすじ
父が飛龍想一に遺した京都の屋敷――顔のないマネキン人形が邸内各所に佇(たたず)む「人形館」。街では残忍な通り魔殺人が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読み(カウントダウン)はすでに始まっていた!? シリーズ中、ひときわ異彩を放つ第4の「館」、新装改訂版でここに。
感想(ネタバレなし)
今回の作品は今までとは違って、京都の和風なお屋敷が舞台になっている。
今まで中村青司の手がけた洋風な館が舞台だったので、この時点で既に今までの作品との違いがはっきりとある。
そして、最も大きく違っているのが、完全クローズドではない、という部分。
人形館がメイン舞台ではあるが、完全に孤立した館というわけではない。
館はクローズドではないが、語り手である陰気っぽい主人公が、自身で完全孤立した雰囲気を醸し出しているところは、実は重要なポイントであるのかな、と思ったりもしているが、、
そして作中で常に映し出されるマネキン人形の不気味さ、、この不気味さは終始かなり独特な空気感を放っていてよかった。和風な屋敷だからこその怖さが十分に発揮されていた。
もう一つこの作品でとても印象に残っているのは、色彩の表現だ。
主人公が語る暗くてグレーな世界の中で、表現される色彩は強調されて、その意味をより明確にしているような気がした。
血まみれになっているような新鮮な赤色は、より不気味さと恐怖を強調して、記憶の中に現れる彼岸花や空の赤色は、想像の中での懐かしさを思わせてくれる。
そんな色彩表現が作品の雰囲気をより濃くして、想像を膨らませて楽しめる作品でもあるなと感じた。
重要な推理部分だが、賛否を呼ぶ結末ではあったのかなと思う。
が、賛否を呼ぶのは、これが館シリーズ内の作品であることが原因であるのかなと思ったりもする。
館シリーズの制約に期待している部分が大きいからこそ、結末に納得が行かなかったりするかもしれない。
なのでこの作品を読むときは、館シリーズのイメージを取っ払っておく、もしくは館シリーズの他の作品とは時間を空けておくことをお薦めしたい。
私としてもかなり最後は戸惑ったりもした。
館シリーズとしてはあまり好きではないが、そうではない小説としては楽しめたと思う。
次回
ついに時計館を読み終えたので、忘れないうちにそれについて書こうと思う。
今は館シリーズを一旦休憩して、エラリークイーン悲劇シリーズ1作目を読んでいる。
初めての作家の本を読む時ってドキドキしてなんかいい。