ミステリ談義の蕾

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【館シリーズ④】人形館の殺人

かなり久しぶりになってしまいました。

今日は館シリーズ4作目 人形館の殺人です。

シリーズ中ではかなり異彩を放つ作品。

あらすじ

父が飛龍想一に遺した京都の屋敷――顔のないマネキン人形が邸内各所に佇(たたず)む「人形館」。街では残忍な通り魔殺人が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読み(カウントダウン)はすでに始まっていた!? シリーズ中、ひときわ異彩を放つ第4の「館」、新装改訂版でここに。

感想(ネタバレなし)

今回の作品は今までとは違って、京都の和風なお屋敷が舞台になっている。

今まで中村青司の手がけた洋風な館が舞台だったので、この時点で既に今までの作品との違いがはっきりとある。

そして、最も大きく違っているのが、完全クローズドではない、という部分。

人形館がメイン舞台ではあるが、完全に孤立した館というわけではない。

館はクローズドではないが、語り手である陰気っぽい主人公が、自身で完全孤立した雰囲気を醸し出しているところは、実は重要なポイントであるのかな、と思ったりもしているが、、

 

そして作中で常に映し出されるマネキン人形の不気味さ、、この不気味さは終始かなり独特な空気感を放っていてよかった。和風な屋敷だからこその怖さが十分に発揮されていた。

 

もう一つこの作品でとても印象に残っているのは、色彩の表現だ。

主人公が語る暗くてグレーな世界の中で、表現される色彩は強調されて、その意味をより明確にしているような気がした。

血まみれになっているような新鮮な赤色は、より不気味さと恐怖を強調して、記憶の中に現れる彼岸花や空の赤色は、想像の中での懐かしさを思わせてくれる。

そんな色彩表現が作品の雰囲気をより濃くして、想像を膨らませて楽しめる作品でもあるなと感じた。

 

重要な推理部分だが、賛否を呼ぶ結末ではあったのかなと思う。

が、賛否を呼ぶのは、これが館シリーズ内の作品であることが原因であるのかなと思ったりもする。

館シリーズの制約に期待している部分が大きいからこそ、結末に納得が行かなかったりするかもしれない。

なのでこの作品を読むときは、館シリーズのイメージを取っ払っておく、もしくは館シリーズの他の作品とは時間を空けておくことをお薦めしたい。

 

私としてもかなり最後は戸惑ったりもした。

館シリーズとしてはあまり好きではないが、そうではない小説としては楽しめたと思う。

次回

ついに時計館を読み終えたので、忘れないうちにそれについて書こうと思う。

今は館シリーズを一旦休憩して、エラリークイーン悲劇シリーズ1作目を読んでいる。

初めての作家の本を読む時ってドキドキしてなんかいい。