今日は 館シリーズ 第2作 水車館の殺人について書こうと思う。
(ネタバレはありません)
初めに言いたいが、この作品の本当の価値はここにあると思う。
どんな推理も及ぶことのできない「幻影群像」に隠された秘密
あらすじ
仮面の当主と孤独な美少女が住まう異形の館、水車館。1年前の嵐の夜を悪夢に変えた不可解な惨劇が、今年も繰り返されるのか? 密室から消失した男の謎、そして幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る恐るべき秘密とは……!? 本格ミステリの復権を高らかに謳(うた)った「館」シリーズ第2弾、全面改訂の決定版!
感想
まずは純粋に、序盤から中盤にかけては十角館を読んだ後だからかどことなく地味な印象を感じていた。「過去」と「現在」が繰り返される構成の意味にも気づかずに、ただ終始続くダークな雰囲気を楽しんでいた。
回り続ける水車の館と、仮面をつけたその主人、密かに眠る遺作、謎のバラバラ死体、、どれも十角館のような派手さはないものの、ミステリ好きを惹きつける魅力がたくさん散らばっていて、飽きが来ることはなかった。
むしろ、その地味さが、本格的な推理へ集中させてくれたのかもしれない。
この本の構成と、散りばめられたヒントをもとに静かに推理を楽しめる作品だったように思う。
私としては、かなり推理が捗ったんではないかと思う。
いいところまで推理できるが、全体像までハッキリと描けることができない、この微妙なバランスがとても丁度いい作家さんだなと思う。
それだけでなく、推理が終わり全体が見渡せた後もまだ遺作の謎が残り、そしてその幻影群像の意味を知ったとき、、
この丁度良さと、推理が完了した後もそれだけでは終わらせないサプライズ的ラストが、私のようなミステリ初心者にも、本格的なミステリファンにも愛される理由なのではないだろうか。
この作品は水車というよりも、天才画家 藤沼一成の遺作「幻影群像」により焦点が当たった作品だったように感じる。
私には、ミステリと組み合わせるとたまらないという謎のフェチ(?)がある。
(私に限った話ではないと思うが)
- ミステリ×客船
- ミステリ×列車
- ミステリ×絵画
この最後の一つに当たるのが今回の作品だった。
この作品でのミステリと絵画の紐付け方は、なんというか唸ってしまうような良さがあった。最後にとても静かな衝撃を浴びせられて、その衝撃の不気味さと、大きな満足感を感じながら本を閉じることができる、、そんな最高の終わり方だった。
ミステリと絵画の組み合わせには、何か惹きつけられるものがある。
それはきっと絵画自体が不思議な力を持っているからだと思う。
が、普段芸術を鑑賞してもあまり良さがわからない人間なので、こういった作品の中で登場人物たちの絵画に関する見解を知るのもとても興味深い。
ミステリと絵画の組み合わせがある小説が他にもあれば読んでみたい。
私としては映画 名探偵コナン「業火の向日葵」くらいしか知らない。
(ミステリ×絵画 としては最高のコンセプトだった)
静かな推理を楽しみながら、遺作を巡る謎を存分に楽しめる、静かながらも大きな満足感を得られる作品だ。
次回
次回は同シリーズ第3作 迷路館の殺人 です。
ちなみに現在第4作 人形館の殺人を読んでいる最中(かなり終盤)ですが、
私の中で犯人は定まりました。早く答え合わせしたい!